静かな池。
水面に浮かぶ無数の甲羅。その中で、“赤い耳”を持つ者を見たことはないだろうか。
ヤツらは岩の上で太陽を浴び、無言でこちらを見つめている。
だがその裏で、小魚を喰らい、水草を削り、水辺の生態系を侵食し続けている――。かつて「ミドリガメ」の名で愛された小さな命。
しかし成長したその姿は、自然界へ放たれた“外来の覇者”だった。今回は、日本全国で問題となっている「ミシシッピアカミミガメ」の生態・危険性・外来種問題・飼育事情まで徹底解説していこう。
ミシシッピアカミミガメとは?

ミシシッピアカミミガメは、北アメリカ原産の淡水性カメである。
正式名称は「ミシシッピアカミミガメ」だが、日本では「ミドリガメ」という名前で広く知られている。
幼体は鮮やかな緑色をしており、かつてはペットとして大量輸入された。
しかし成長すると大型化し、飼いきれなくなった個体が野外へ放流された結果、日本全国で定着してしまった。
現在では、日本を代表する外来カメとして知られている。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | ミシシッピアカミミガメ |
| 通称 | ミドリガメ |
| 英名 | Red-eared Slider |
| 学名 | Trachemys scripta elegans |
| 分類 | カメ目 ヌマガメ科 |
| 最大甲長 | 20〜30cm前後 |
| 寿命 | 20〜40年ほど |
| 食性 | 雑食性 |
| 原産地 | 北アメリカ |
| 危険度 | ★★★★☆(生態系への影響が大きい) |
日本で見かける場所
ミシシッピアカミミガメは、日本全国の淡水域で確認されている。

特に以下のような場所で見かけやすい。
- 都市公園の池
- 河川
- 農業用水路
- 沼地
- ダム湖
- 学校の池
- 神社の池
晴れた日には、岩や流木の上で集団で日光浴している姿を見ることも多い。
生息地と分布
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日本での分布 | 全国各地 |
| 好む環境 | 池、川、沼、水路など |
| 活動時期 | 春〜秋 |
| 冬 | 冬眠する |
| 特徴的行動 | 日光浴を頻繁に行う |
| 繁殖時期 | 初夏〜夏 |
外見の特徴
“赤い耳”の正体
最大の特徴は、頭の横にある赤い模様。
この部分が“耳”のように見えることから、「アカミミガメ」と呼ばれている。
幼体は鮮やかな緑色だが、成長すると黒っぽく変化する個体も多い。
大型化する甲羅
小さな幼体のイメージが強いが、成長すると30cm近くまで大型化する。
大型個体はかなり重量感があり、水辺では強い存在感を放つ。
驚異の雑食性
とにかく何でも食べる
ミシシッピアカミミガメは非常に強い雑食性を持つ。

主な餌は以下の通り。
- 水草
- 昆虫
- 小魚
- 甲殻類
- 両生類
- 水辺の死骸
- 人工飼料
この“何でも食べる性質”によって、非常に高い環境適応力を持っている。
日本各地へ広がった大きな理由も、この雑食性にある。
外来種として問題視される理由
ミシシッピアカミミガメは繁殖力が高く、日本の在来生物へ影響を与えている。
特に問題視されているのは、
- 在来カメとの競合
- 水草の大量摂食
- 小型生物の捕食
- 生態系バランスの変化
などである。
現在では「条件付特定外来生物」として扱われ、規制対象となっている。
人への危険性
毒はないが噛む力は強い
ミシシッピアカミミガメに毒性はない。
しかし大型個体はアゴの力が強く、
- 噛みつき
- 引っかき傷
- 暴れる力
には注意が必要。
不用意に口元へ手を近づけるとケガをする可能性がある。
サルモネラ菌への注意
カメ類はサルモネラ菌を保有している場合がある。
触った後は必ず手洗いを徹底したい。
危険度を5段階で評価
| 項目 | 危険度 |
|---|---|
| 攻撃性 | ★★☆☆☆ |
| 噛みつきリスク | ★★★☆☆ |
| 繁殖力 | ★★★★☆ |
| 環境適応力 | ★★★★★ |
| 生態系への影響 | ★★★★★ |
| 総合危険度 | ★★★★☆ |
実際に見た印象・管理人コメント

管理人の一言
都市公園の池で大量の日光浴集団を見たことがありますが、とにかく数が多いです。
しかも人間をあまり恐れず、池へ近づくと一斉に「ドボン!」と飛び込む光景はかなり迫力があります。
子どもの頃は「かわいいカメ」という印象でしたが、大型化した個体を見ると完全に別物です。
“ペットが外来種問題になる”代表例だと感じさせられる生物でした。
見つけたときの対処法
やるべきこと
- 不用意に触らない
- 子どもへ注意を促す
- 手洗いを徹底する
- 自治体の外来種情報を確認する
やってはいけないこと
- 野外へ放流する
- 別地域へ移動させる
- 口元へ手を近づける
- 飼育放棄する
子どもやペットがいる家庭での注意点
小さな子どもは、カメへ不用意に触りやすい。
大型個体は噛む力が強いため注意が必要である。
- 素手で持ち上げない
- 触った後は手洗い
- 小型ペットを近づけすぎない
など、安全管理を徹底したい。
飼育は可能?
長期飼育を前提に考える必要がある
飼育自体は可能だが、長寿かつ大型化するため、軽い気持ちで飼うべき生物ではない。
飼育環境

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 水槽 | 大型水槽推奨 |
| 水温 | 24〜28℃前後 |
| 陸地 | 日光浴スペース必須 |
| 紫外線 | UVBライト推奨 |
| 餌 | 人工飼料、魚、野菜など |
寿命は20〜40年と非常に長い。
「数十年飼う覚悟」が必要になる。
絶対に野外へ放さない

飼育できなくなったからといって、池や川へ放流するのは絶対にやめよう。
外来生物問題は、こうした無責任な放流によって拡大してきた。
現在では、自治体や専門機関で引き取り相談を行っている場合もある。
最後まで責任を持って飼育することが重要である。
天敵
大型化したミシシッピアカミミガメには、自然界での天敵が少ない。
一方で、
- 大型鳥類
- タヌキ
- 人間
などによって捕食・駆除される場合もある。
それでも高い繁殖力によって各地で増加している。
人間との関係

ミシシッピアカミミガメは、かつて“子ども向けペット”として爆発的に流行した。
しかしその結果、日本中へ定着し、現在では外来種問題の象徴とも言える存在になっている。
つまりこのカメは、“かわいいペット”と“侵略的外来種”という二つの顔を持っているのである。
関連する行政・環境省情報
地域によっては、回収相談や啓発活動が行われている場合もある。
まとめ
ミシシッピアカミミガメは、
- 「ミドリガメ」として広く流通した
- 非常に高い環境適応力を持つ
- 雑食性で何でも食べる
- 日本の水辺へ大きな影響を与えている
存在である。
小さく可愛らしい幼体の裏には、圧倒的な生命力を持つ“外来の覇者”としての姿が隠されている。
もし池で赤い耳を見つけたなら――。
それは、“侵略の歴史”そのものなのかもしれない。
あとがき
赤き紋章を刻まれし甲羅の戦士。
小さき水槽から始まったその物語は、やがて日本中の水辺へ広がった。
人に飼われ、人に捨てられ、それでも生き延びた外来の覇者。
その瞳は今日も、水面の向こうから静かにこちらを見つめている――。
もし池で赤い耳を見つけたなら。
そこには既に、“静かな侵略”が根付いているのかもしれない。



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